「東海道五十三對(対)」をご存じですか?(※1)
「五十三つぎ」ではなく、「五十三つい」です。
歌川広重作「東海道五十三次」に倣い、東海道の53の宿場と江戸日本橋・京三条大橋の2地点を加えた55地点を描いた版画集ですが、「五十三次」が風景メインなのに対して、「五十三対」は各地点に伝わる物語や、各宿場を舞台とした歌舞伎の演目などを、「美人」や役者の絵で紹介したものです。作画は、歌川国芳、歌川広重、三代歌川豊国が担当。
19番目の宿場「府中」(現在の静岡県静岡市葵区)では、名物の「安倍川餅」と「安倍茶」が描かれています。描いたのは広重。
絵は2段構成で、上段には大きな川の絵が描かれ、
「安部郡(ママ)に流れるので『あべ川』と言う。大井川にならぶ大河。東岸に『みろく茶屋』という茶屋があり、餅が食べられる。『あべ川餅』の由来である」
という説明が添えられています。「安倍川もち」の名付け親は徳川家康だと言われています。「五十三対」が製作された19世紀半ばには、庶民にもおなじみの食べ物だったのでしょう。
下段には、おそろいの着物・前掛け・手ぬぐい姿で、茶摘みをする美人が2人。1人は、茶葉でいっぱいになったカゴを大切そうに抱えながら腰を下ろして、ちょっと休憩。もう1人はまだ茶葉を摘んでいます。2人のポーズや表情がとてもいきいきしています。
「名産の安部茶(ママ)は府中の北、足久保で産出される。関東一の茶園で、全国に広く出回っている。宇治や信楽に並ぶ産地」
という説明とともに、
「駿河路や 花橘(たちばな)も 茶の匂い」
という松尾芭蕉の句が添えられています。
関東一の茶園として紹介されている「足久保」は、静岡茶発祥の地(※2)。人気の食べ物と銘茶が併せて紹介されていて、「府中」のページは「東海道五十三対」の中でもまるでグルメガイドのようです。つきたてのお餅にきなこをまぶし、おいしいお茶とともにいただきたくなってきますね。
小野園の粉末茶「グリーンティー 」は、抹茶にグラニュー糖をブレンドした人気商品。ゆでたお餅にまぶしてもおいしいですよ。
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※1 国立国会図書館デジタルコレクション 「府中」は写真22枚目
※2 静岡茶発祥の地 足久保