お茶は、私たちの暮らしの中に古くから当たり前のように存在しています。お茶を入れ、話に花を咲かせる…。最も身近な飲み物だからこそ、お茶にまつわるさまざまな言葉やことわざも生まれたのでしょう。その代表的な言葉たちをご紹介します。
◎茶茶を入れる
話に水をさす、妨げる、まぜっかえすといった意味。よい言葉とは言えませんが、妨害・無分別というよりは何となくユーモラスな響きがあります。「茶茶」には妨害、邪魔という意味があり、「無理わがままを言ってねだる」という意の「邪邪」の音が澄んで「チャチャ」となったとも言われています。その類語として使われている『茶化す』などは、茶が「休息」を表すことから、はぐらかすという意味合いをもたせているとの見解もあります。
◎茶にする
ひと休みしてお茶を飲むことから、休憩するの意味として使われています。喫茶店などに寄ることも同じように言ったりします。また、まじめにとりあわない、馬鹿にする、軽く見る、人を利用してあとは打ち捨てて放っておくなどといった、あまりよくない意味もあります。反対に、茶道の作法にかなったものにする、簡素でしゃれた風にするといった、風雅な意味もあり、「お茶」の持つ世界の広さがうかがえます。
◎無茶
「茶にする」という言葉に、茶道の作法にかなったものにするという意味があることは前述のとおりですが、その反対はというと「無茶」になります。ここから、筋道がたたないこと、道理に合わないことを意味します。また、乱暴に扱ったり、乱雑にしたりすることや、駄目にしたり無視したり、かえりみないことや、度を外れているという意味もあります。「無茶苦茶」「滅茶」「滅茶苦茶」等々、同様な言葉です。
◎茶番・茶番劇
底の見え透いた馬鹿げたできごとのこと。江戸時代、歌舞伎芝居の楽屋で、茶番(お茶くみ)にあたった下級役者たちが歌舞伎役者たちを慰労するために始まった茶番狂言がその語源だといわれます。かつらや衣装をつけて芝居をもじった所作をする、滑稽な寸劇などの座興だったようです。
◎鬼も十八、番茶も出花
「番茶」は、摘み残しの葉からできた品質の落ちる茶葉のことすが、それでも入れたてはとても美味しいのです。その事とかけて、醜い鬼も年頃になれば少しは美しく見え、誰でも一生に一度は美しい時期があるという意味です。
◎茶腹も一時
お茶を飲んだだけでもしばらくは空腹を紛らわすことができるように、わずかばかりのものでも一時しのぎにはなる、急場の間に合わせになるという意味です。文字通り空腹のときに使えます。たとえば「今夜飲み会だけど、腹がへったな。茶腹も一時で、軽く何か入れておこう。」などと使います。食事とは関係なく、急場しのぎの意味でも使えます。実際は、お茶で空腹をしのぐことはあまり体にはよくないようです。
ちょっと注意して辺りに耳を傾けてみれば、お茶にまつわる言葉がまだまだたくさん溢れています。まさに『日常茶飯事』に使われているのですね。