「茶道」といえば、茶杓(ちゃしゃく)を使って茶碗に抹茶を入れ、畳の下にある小さな囲炉裏で沸かしたお湯を柄杓(ひしゃく)で注ぎ、茶筅(ちゃせん)で泡立てる「茶の湯」をまっさきに思い浮かべる人が多いでしょう。
抹茶ではなく、玉露や煎茶、ほうじ茶などをおいしく淹れる「煎茶道」もあります。いつも飲んでいるお茶を風流に楽しむ煎茶道とは、どういったものでしょうか。
煎茶道では、素焼きの「焜炉(こんろ)」(涼炉・風炉など別名がたくさんあります)を使って、炭火を起こしてお湯を沸かします。
火を使う部分だけ素焼きにして、本体や台はきれいな陶器や磁器を使ったものもあります。
持ち運びできますので、ひとつ持っていればいつでもどこでもお湯が沸かせます。
現代では電気式の焜炉もあり、室内でも安心して使えます。
お茶のいただきかたは、私たちが日常的に飲んでいるお茶と同じです。
急須に玉露や煎茶(芽茶や棒茶なども含む)、ほうじ茶などの茶葉とお湯を入れて、茶碗に注いでいただきます。流派によっては、紅茶や中国茶・台湾茶などもOK。
茶碗はお客の数だけ用意され、各自飲みます。回し飲みはしません。
急須に好きな茶葉を淹れてみんなで飲む。いつもどおりのお茶ですよね。
茶の湯は安土桃山時代に千利休によって完成され、おもに武士に愛好されましたが、煎茶道はそれよりもあとの江戸時代中期に、文人墨客(書画や詩歌に親しんだ文化人)たちの間で興りました。
茶のことをうたった中国の詩を書いたり、故事から題材をとった絵を描いたりした煎茶道具が残っています(※)。
江戸の文人たちは、親しい人たちとお茶を飲みながらそういった茶道具を見て、会話をはずませたのでしょう。
「おいしいお茶と快適な空間で、お客様をおもてなしする」「亭主の心遣いをありがたく受けて、皆で楽しいひとときを過ごす」という、基本的な姿勢は茶の湯も煎茶道も変わりありません。
お茶は、いつの時代も人の心をほぐし、人と人との距離を縮めるものなのです。
ときには親しい人たちに、心を込めてお茶を淹れてさしあげてみてはいかがでしょうか。
【おいしいお茶の淹れ方】
https://onoen.jp/howto/index.html
【ご家庭用のおいしいお茶】
https://onoen.jp/product-category/katei-item/
※文化遺産オンライン(国立情報学研究所)より
煎茶提藍(せんちゃ ていらん)
煎茶具(せんちゃぐ)・青木木米/作
黄釉荒磯浮文急須(おうゆう あらいそ うきもん きゅうす)・青木木米/作