お悔やみ状や香典などで故人をしのんでくださったかたにお送りする「香典返し」「満中陰志」や、仏事の参列者におみやげとしてお渡しする「引き出物」には、日本茶が使われることが多くあります。
地方によって理由はさまざまですが、主に以下の5つが挙げられるようです。
1.忌を払う
「お茶により煩悩を除き、神や仏の助けにより極楽浄土に還り、忌を払う」
という昔からの言い伝えにより、香典返しや引き出物にお茶を贈ります。
2.仏教の伝統から
平安時代や鎌倉時代に、中国から日本へ、仏教や僧侶とともに茶が伝わりました。
仏壇にお茶を供える寺院の習慣が一般にも広まり、お茶イコール仏教・寺院というイメージが定着したため、「仏事にはお茶」という習慣ができたのです。
3.故人とお別れする
茶の木は古くより、畑や土地の境界線に植えられることが多く、「お茶の木を越えたら、よその土地」という目印になってきました。
また、仲良くなりたい人や異性を「お茶に誘う」、仲良くなったら「茶飲み友達」という言葉にも表れているとおり、お茶が「ある一線」を意味することもあります。
通夜や葬式、法要のあとにお茶を飲むことで、この世にいる参列者と、あの世に旅立った故人との間に境界線を設け、故人とお別れするという意味があります。
4.故人を偲ぶ
お茶を飲みながら故人について思いをめぐらせ、故人のことを語り合って過ごそうという意味で緑茶やコーヒーを送ります。
5.寂しくないように
香典返しとして人気がある緑茶、コーヒー、砂糖、石鹸などの品物は、消耗品です。
ずっと形が残る記念品だと、見るたびに故人を思い出し、つらく寂しい思いをする人もたくさんいらっしゃるでしょう。
でも、消耗品なら、毎日使ううちになくなってしまいますので、いつまでも悲しまないで済みます。
お茶を贈るのは、列席者の気持ちを思いやった施主の配慮とも言えますね。