江戸時代の代表的な俳人のひとり、小林一茶(1763 ― 1828年)は、作品数がたいへん多く、生涯で2万句ほど詠んだとも言われています。(同じく江戸時代の与謝蕪村が約3000句、松尾芭蕉が約1000句だとか)。
お茶を詠んだ句ももちろん多く、150句ほどあるそうです。いくつかご紹介します。
朝々や 茶がむまく(うまく)成る 霧おりる
しがらきや 大僧正も 茶つみ唄
うぐひすも うかれ鳴する 茶つみ哉
新茶の香 真昼の眠気 転じたり
蓮咲くや 八文茶漬け 二八そば
一茶らしいと申しますか、場面が目に浮かぶ親しみやすい句ですね。
春は、霧が出たり霜が降りたりして、新茶シーズンに向けてお茶の芽がおいしくなる季節です。
一茶が一面に立ち込める朝霧を眺めながら「これでおいしいお茶ができる」と、新茶を心待ちにしている様子が見て取れます。
その新茶つみを楽しみにしているのは一茶だけではありません。偉いお坊さんまでつい茶つみ歌を口ずさんでしまったり、茶つみ歌が響く茶畑でうぐいすが一緒に鳴いていたりします。
そして、けだるい午後の眠気のなか、新茶の良い香りにすっきりと目が覚めてしまうほど、一茶はお茶が好きだったのですね。
お茶漬けも好きで、蓮の花を眺めながら、茶漬けと二八そばを食べたようですよ。
最後に、ちょっとユーモラスなお茶の句を。
屍のやうな 茶もうれる也 夏木立
夏のあまりの暑さに、茶屋では出がらしのお茶まで飛ぶように売れているみたいです。