英語でいう「ブラウン、brown」を「茶色」といいますよね。お茶は、葉の状態でも、飲むときもみどり色なのに、なぜ「茶色」というのでしょうか。
日本人とお茶の付き合いは非常に長く、奈良・平安時代には、貴族や僧侶ら上流階級の人たちが楽しむ高級な嗜好品として親しまれていました。『続日本紀』に続く勅撰の歴史書『日本後記』(815年成立、『日本後紀』とも)には、「遣唐使に同行して唐に留学した僧が、帰国するときに持ち帰ってきたお茶を嵯峨天皇に献上した」という記述があり、現在のところ、これがお茶に関する最も古い記録とされています。
このころのお茶は、「釜などで炒る」→「揉む」→「天日に干す」という製法で作られていました。
炒って作られた茶葉は黒っぽく、淹れるとくすんだ赤や黄色のような、渋い色合いになったそうです。
みどり色ではなくブラウン色のお茶といえば、ほうじ茶やウーロン茶ですが、これらはまさに、炒って作るお茶。かつてはこのようなお茶が一般的だったのです。「ほうじ茶の色=茶色」と考えれば、なるほど納得ですね。
また、茶葉を使って布を染めるとブラウン色になったそうで、「茶で染めた布の色」を「茶色」と呼ぶようになったとも考えられています。
では、みどり色の葉から、なぜこのような色が生まれるのでしょうか。
答えは、お茶に含まれる「カテキン」や「タンニン」です。
お茶を飲んだあと、湯呑みをずっとそのままにしておくと、茶渋が残りますよね。これが「茶色」なのです。
さて、「茶色」という言葉ができたころは、炒ったお茶が一般的でしたが、江戸時代中期になると、「蒸す」→「揉む」→「乾燥させる」という現代風の製法が完成し、みどり色のお茶が誕生しました。
最初の「蒸し」の時間を長くとったものが「深むし茶」です。小野園の深むし茶を淹れると、一般的な煎茶よりも、濃いみどり色が出ます。
ブラウン(茶色)、グリーン(みどり色)、ダークグリーン(濃いみどり色)など、お茶にはいろんな色がありますので、お茶を召し上がるときには、ぜひ色も楽しんでください。