冬の料理と言えば鍋、おでん。カップ入りやパック詰めの手軽な商品が豊富になり、いまやおでんは一年中いつでも楽しめるようになりましたが、やはり寒い日の熱々おでんは格別です。関東では、おでんと茶飯(ちゃめし)をセットにして食べる習慣があります。
茶飯には、大きく分けて2種類あります。
ひとつは、飲み物のお茶とは関係なく、お米を炊く時に、醤油・塩・酒を混ぜて味をつけたごはんのこと。色が茶色(ブラウン)だから茶飯と呼ばれています。
もうひとつは、お茶で炊くごはん。これは奈良の東大寺が発祥とされています。毎年3月の行事「お水取り」でこもる僧侶たちのための献立に、その原型が見られるそうです。
・醤油で味付けした茶飯
おでんはもともと、豆腐やこんにゃくに甘い味噌をつけて食べる「みそ田楽」でした。「田楽(でんがく)」に「お」をつけて、「おでんがく」から「おでん」になりました。こたつを「おこた」と言ったり、冷や水を「おひや」と言ったりする『女房言葉』のひとつです。
この甘いおでんに、醤油・塩・酒で味付けをしたごはんがよく合いました。そこに熱燗をつけた3点セットが、江戸っ子に人気の組み合わせでした。
その後おでんは、出汁で練り物を煮る今のような料理に変化しましたが、茶飯を合わせるスタイルは変わりませんでした。現代では、おでんの出汁で炊くこともあります。老舗のおでん屋さんでは、コースの〆に茶飯が出ます。
この茶色いごはんを、静岡では「さくらごはん」と呼びます。静岡のおでんは豚モツや牛スジといった肉が入っていることと、具を串に刺すことが特徴です。
静岡に来た時は、ぜひ静岡風おでんとさくらごはんをご賞味ください。
・お茶で炊く「奈良茶飯」
水ではなく、煮出したほうじ茶や番茶でごはんを炊くのは、奈良が発祥の「奈良茶飯」。しかし、広く庶民が食べるようになったのは、発祥の地である奈良よりも、江戸が先だったそう。奈良を訪れた旅人が、江戸に帰って広めたそうです。いにしえの都へのあこがれも手伝って、人気を博したとのこと。明治以降は、本場奈良でもよく食べられるようになり、いまでは郷土料理のひとつとなっています。
研いだ米を、飲む時よりも濃い目に煮出したほうじ茶や番茶、煎茶で炊くだけです。煮出したあとの茶葉を刻んで入れたり、大豆や小豆など豆類を炒って入れたりすることもあります。
こぶ茶を混ぜたり、塩を入れたりして、うっすらと塩味をつけてもおいしいですよ。
小野園のおすすめは「極上ほうじ茶」です。
強火で煎じた香ばしい風味が楽しめます。
https://onoen.jp/product/ho009a1/
【参考】
■うちの郷土料理:農林水産省
奈良県の奈良茶飯
神奈川県の奈良茶飯
福井県の茶飯
静岡県のおでん