「ぐり茶」。風変わりな名前ですね。
小野園でも人気の商品のひとつですが、なぜこんな名前なのでしょうか。
ぐり茶は、製造工程が煎茶と少し違います。生葉の蒸し時間が長く、また、茶葉の形を揉んで整える工程がありません。煎茶は、スッと伸びた姿に茶葉を整えますが、ぐり茶はそれをしないのです。
そのため、葉は丸まった自然な姿に仕上がります。
この、葉の自然な状態が「ぐりぐりっと丸いから」、「ぐり茶」という名が付いたとされています。まん丸で愛らしい目を「くりっとした目」と表現しますが、それと同じ語感ですね。
茶葉が勾玉のような形なので、「玉緑茶(ぎょくりょくちゃ)」とも呼ばれますが、「ぐり茶」のほうがなんだか可愛らしい感じがしませんか。
では、なぜぐり茶は茶葉を整形しないのでしょうか。
実は、ぐり茶はもともとは、輸出用に九州で作られたお茶なのです。
作られたのは1930年ごろ、輸出先はソヴィエト連邦(旧ソ連、現ロシア)でした。
それまで、ソ連では中国のお茶を輸入していました。中国のお茶は、釜で炒って作るので、茶葉がくるんと丸まっています。丸い茶葉になじんでいるソ連の人々が受け入れやすいよう、ぐり茶が開発されたのです。
日本茶ならではの繊細な味わいはソ連でも人気を博し、一時は輸出も非常に活発になりましたが、残念ながらその後、第2次世界大戦の足音の高まりとともに、途絶えてしまいました。
しかし、ぐり茶は味が良いため、日本国内で人気が出ました。
まず、生葉のまま蒸すので葉が傷まず、うまみがよく出ます。また、お茶の渋みは茶葉を揉んで整える工程で増すのですが、ぐり茶は揉みませんから、渋みが抑えられます。
ぐり茶を生産しているのは、九州の一部の地域と静岡県のみです。特に静岡県東部の観光地、伊豆や熱海のぐり茶は、旅行みやげとして全国にその名が広まりました。
小野園は、静岡東部・御殿場で深蒸し茶ひとすじにまい進してまいりました、創業100年の老舗です。小野園のぐり茶は、渋みや苦みが苦手なかたにもご満足いただける、まろやかな甘みのあるお茶です。ぜひ一度、ご賞味下さい。